夏への架け橋。

浮島に輝くプラント

■風の巻く丘

梅雨も明け、抜けるような青空の下を、久し振りに自転車で走り始める。
気軽に漕ぎ始めたペダルで向かうのは、職場の引っ越しに伴い以前より幾分か近くなった川崎臨海工業地帯。
暫く慌ただしく過ごしていた状況の合間を縫って、人通りの賑やかな繁華街を抜け、大型車両の行き交う幹線道路へと静かに進む。
蝉の鳴き声が遠く響く暖かい日差しの中をそのまま駆け続けると、目的地へと近付いた証となる潮風が勢い良く向こうから流れて来る。
やがて、埋め立て地へと誘ういつもの橋が徐々に見えてきて、馴染み深い景色が眼前へと広がり始める。
そうして、場所毎に足を休めながら多種多様なプラントが遠く近くに林立する様子を風に吹かれながら眺めていると、夏らしく元気な雲が漂う空へと次々に飛び立つ旅客機が、高らかに自己主張をして頭上を追い越して行く。
踏切の音を引き連れ長閑な調子で工業地帯を横切る三両編成の貨物列車と併走しながら、夏休みを思い思いに過ごす様々な年齢の人達と時に擦れ違う中を、炎天下に強い陰影を形作るプラントの力強さを見詰めていると、気が付けば束の間の工場散策はそのまま穏やかに終了時刻を迎える。
ここ暫く出会えなかった勢いのある情景に心地良く背中を押されるようにして徐々に速度を増した自転車は、打ち合せ相手が待つ街の喧噪へとまた戻り始めた。

(写真/工業地帯へと続くいつもの橋から)