《冬のコンビナート巡り》/3

夜に瞬く鹿島の化学プラント

■洩れ光る海

陽が傾くと同時に少しずつ増え始めるコンビナートの灯りの粒を眺めていると、肌寒さが徐々に厳しくなって来る。
そうして、闇の中へと落ちて行くプラントの様子を、潮風が身を切る様に駆け抜ける中を暫く見下ろした後、澄んだ空気の向こうに輝く光りの海原を間近と感じる為に、その日最後の展望場所へと3台の車は走り出す。
臨海工業地帯の中を何処までも真っ直ぐ続くと云う錯覚に囚われそうな暗い夜道を、各々異なる感慨に耽る様に言葉少なく静かに進む。
やがて辿り着いた空き地前の駐車場所にヘッドライトを揃えるように車を休め、雑草の中を無造作に刈り取られた道に沿って厚着をした人影がゆっくり歩み出す。
そうして高台となった場所に辿り着いた先には、夜空へと吸い込まれる様に白煙を吐き続けるプラントが、各々の個性を見せ付けようとキラキラ瞬きながら並んでいた。
吐く息が瞬く間に冷たくなる中、無言の侭に横へと並んで眼前に広がる瞬きを見詰めていると、時間の感覚が遠くへと消え去って行く。
笑顔と共にその景観を心の中一杯に取り込み、存分と満足した者から順に冷えた身体を車へと運んだ頃には、丁度都内で終電に間に合わせる為には一杯の時刻となる。
最も遠くから来ていた1人が逸早く帰路へと就く中、皆で近い時期の再訪を誓った充実のコンビナート巡りは、今回も参加者に恵またまま穏やかに幕を閉じた。

(写真/夜に瞬く鹿島の化学プラント)