初めて訪れた工場地帯は「鍋の湯気」の向こうに聳え立っていた。

■「縦横無尽に走る配管や剥き出しに組み合わされた鉄骨に癒される」自分の特性に気付いた瞬間

車で工場の脇を通り過ぎる事はあってもワザワザ工場だけを見に行く事がなかった自分が、初めて工場の為だけに足を運んだのが川崎工場地帯の一画にある千鳥町でした。
海に面した千鳥公園の脇で工場に囲まれながら、何人かの工場好きの方達と一緒に工場談義をしながら美味しく野外で鍋を頂いた事を、まるで昨日の出来事の様に鮮明と覚えています。
初めて間近で見る工場に凄く興奮して、その時に一緒した方から教えて貰った有名な工場見物スポットで、幾つもの照明に照らされて浮かび上がる雄大なその姿をいつまでも見ていたものでした。
当時はまだカメラを購入する以前だったので、その光景を自分の眼に焼き付けるしかなかった事を凄く残念に感じつつも、それより「もっとプラントの細部を鮮明に見てみたい」と云う欲望が強く心の奥に湧いたのが、人様の工場サイトを回るだけでは飽き足らず「自分もカメラを買ってみよう」と明確に意識した最初だったように思います。

そういえば、ポンピドゥー・センターの映像を初めて見た時にその外観に眼が釘付けになったのは、今になって思えば剥き出しの鉄骨やダクトを組み合わせたデザインが工場のプラントを彷彿とさせたからなのかもしれません。


Centre Pompidou (Art Spaces)

Centre Pompidou (Art Spaces)

(写真/対岸に水江町を望む)