ささやかで賑やかな旅路

JFEスチール東日本千葉地区

■人それぞれの想い

ここ暫く、カメラも持たずに誰かを案内して各地の工場を観に行く事が多くなっていたが、先日久し振りに大勢で港を歩く機会を得る。
昼過ぎに千葉から始めて、初対面の相手も大勢含みながら車三台に分乗しての工場巡り。
今年も何度と満喫した定番の千葉港巡りを皮切に南下、馴染みの場所を時間を掛けてゆっくりと眺めて行く。
個性豊かな相手と共に時間を過ごす賑やかな港巡りが、1人気儘に行う工場鑑賞と異なる最も大きな点は、工場に興味を抱きながらもやはりそれぞれに惹かれる視点が全く違うと云う事実と改めて新鮮な気持ちで触れられる事。
車と云う密室での長距離移動の為もあり、開始数時間で既に伸び伸びと打ち解け合いつつ、各々が過去に過ごして来た工場体験を交互に語り合いながら時間は進む。
そうして、ある時は船上で周囲を取り囲む水鳥相手に戯れ、ある時は丘の上に広がる公園で犬と触れ合い、ある時は港で釣り人達と言葉を交わしながら、工場の姿を追い続ける小さな旅は続く。
途中で一旦海ほたるへ寄って軽く休息を取り、京葉工業地域を離れた後はそのまま京浜工業地帯へと入り、徐々に暮れ行く夏空の下、全く異なる魅力を眼前に広がる風景に感じながら直走る。
ここ数年大幅な改築を行っていたが、映画やドラマ等に度々登場して川崎港のランドスケープに欠かせない要素となっていた川崎火力発電所の煙突が6本中3本までが既に解体されていたりと、生き物の様に成長し変化する景観をその都度静かに心へ刻む。
やがて、ベイブリッジを越えて湾岸線を横浜方面へと向かい、所々で出会う石油化学プラントの姿に溜息を零す10数名での港散策は、いつも通りの場所で終わりを迎える。
東京湾を縦横と駆け抜けた先に辿り着いた、何度目か数え切れない程に訪れている港で笑顔の再会を誓い合い、長閑にも充実した楽しい時間は、夜更けと共に一先ずの区切りとなった。

(写真/灯りに浮き上がる鉄骨と配管)