秋雨に烟る街。

wami2006-10-04

モノクロームに包まれて

知人から急に誘われて港へと出掛けたその日は、朝から降り続く小雨に烟っていた。
車に乗って少し賑やかに訪れるのは、徒歩や自転車でも何度と通って眺めた馴染みの風景。
前回と異なる顔触れで1ヶ月振りに訪れるコンビナート、低く垂れ込める空を映すかのように灰色へと染まった工場は、普段よりも数段と重量感を増しながら静かに佇んでいる。
ゆっくりと進む車の前を到る所から吹き上がる純白の水蒸気が覆い、金属の塔が立ち並ぶ風景にささやかな彩りと躍動感を与える。
時に車を降りその中をのんびりと傘も差さずに歩を進めると、見上げるプラントがどれも心なしか大きく見える。
季節や時刻の変化が工場の景観に鮮やかな幅を与える様に、天候もまた独得の魅力に溢れた心地良い眺めを産み落とす。
言葉少なくも互いに気持ちが通じる、その次々と工場を見詰めた心弾む一時は、やがて日没を前に静かに終わりを迎え、広大な土地に並び遙か遠くへ白々と霞み消えていくプラントの峰峰をそっと後にした。

(写真/一面に水蒸気漂う街)