光差す道。

高台を走る道

■宵月に惹かれて

夜の港で工業地帯を散策していると、灯に点々と照らされながら背の高いプラントの合間を縦横に遠くへと続く作業通路にふと気持ちを奪われる。
手の届かない天空を曲がり繋がる細い道を見上げて足を止め、知らず現実感を喪失させる特徴に溢れた造形を眺めている間に、架空の世界へと静かに誘われているかの様な不思議な感覚に包まれる。

何処までも遙かな世界へと意識を運ばれそうな錯覚を呼び起こすその景色は、派手さとは縁遠い限られた色彩をまといながらも、何故か心地良く華やかな印象を胸の内へと残す。
人通りも疎らで静かな港に立ち、その闇の奥に待つ何かを見てみたいと云う漠然とした欲求と揺れるように戯れながら、泊まり仕事の合間に淡々と繰り返される散策時間は涼やかに過ぎて行く。
誰かに呼び戻されるまでのささやかな自由を、上を向きゆっくりと足を踏み出しながら、秋を予感させる穏やかな風の中で今日も1人楽しむ。

(写真/遙か先へと続く作業路の行く末を夢想する、そんな他愛ない日々)