何度でも、金属の森を巡り続ける。

夕陽が差す千鳥町

■時の狭間に夢現

前回、密度の高い工場巡りを過ごした後は、職場を抜けては京浜工業地帯に連なるコンビナートを少しずつ眺めて歩く日が続く。
多くの工場好きに惜しまれながら先月末で閉鎖した横浜プリンスに集まって、根岸側に広がる魅力溢れる景観をスイートから眺めるイベントも大勢の仲間と賑やかに催し、また1つ掛け替えのない想い出となって行く。
そんな日々の中、再度また先日と同じ相手と御一緒して東京湾に連なる工場達を観て歩く機会が訪れる。
工場の持つ躍動感を最も豊かに演出してくれる曇天覆われる空模様を見上げながら、今回も鶴見線の始発駅で時に小雨の降る中を落ち合って、穏やかに車での小旅行が幕を開ける。
低く迫る灰色の空に押し迫られる様な夕方の港を、歴史を感じる深い錆色も未来を見詰める様な輝きも等しく胸に納めながら、順に無理のないペースで進んでいく。
いつの間にか虹の橋が空を駈ける様子を並んでゆっくり見上げていると、何処か日常から切り離されたような不思議な感覚がまた静かに降りて来る。
湾岸線から見渡す景色に遠くまで続くコンビナートの規模を実感しながら、雲の切れ間から橙に染まった夕陽が覗く中、遙かに富士を望むプラント散策は和やかに続く。

間近から規模の大きな工場を仰ぎ見たり、何処までも途切れず連なる工場を高台から眺めたりしながら、前回と少しずつコースを変えつつ闇の訪れた京葉工業地域も楽しく歩く。
そうして、1つ1つ確認するように車内で何度と《工場の何処に惹かれるのか》を互いに語り合う楽しい時間は、瞬く間に過ぎて行く。
いつも通り、金属が重なり魅せるその情景に様々な感慨を湧き起こさせられる一晩は、徐々に千葉港へ向かう行程と共に、やがて少しずつ終りが近付いて来る。
工場へ対する気持ちを誰かと共有出来る嬉しい一時も、終電時刻の訪れと共に笑顔で一旦お別れ。
ここ暫く梅雨の合間に慌ただしく職場の引っ越し作業が続いていたが、また早い時期に、次は久し振りの自転車でのんびり港を廻ってみようと密かに誓った。

(写真/アクアラインへ向かう車窓から)