魅惑の球体。

扇町に並ぶ兄妹達

■優美な曲線

巨大なコンビナートを訪れると、威圧感ある無骨なプラントの合間に並んでいる様々な表情のタンクに、温かく心を和まされる事がある。
1つ1つ異なる形状のタンクが各々の個性を主張をするように隣り合っている事もあれば、同じ顔をしたタンクが幾つも清ました表情で整列している事もあり、その場所毎に彩り豊かに心弾む工場観光の時間を演出してくれる。
個人的に、工場の凛とした美しさは、生産性(と安全性)のみに特化したその飾り気のない剥き出しの姿にこそ強く宿ると感じているが、タンクだけは例外的にその化粧を施された姿からも陽気に愛嬌を湛えた魅力が伝わってくる。
プラントと同じく金属の肌を露わにしているタンクも、派手な衣装に身を包んでいる自己主張の強いタンクも、転がり動き出しそうな球体のタンクも、落ち着いて地に根ざした円柱のタンクも、単身に孤高を纏っている哲学的なタンクも、賑やかに集まって騒いでいる似た者兄妹のタンクも、その何処かユーモラスな立ち姿でいつも見る者を楽しませてくれる。
その場所を初めて訪れる者の気持ちを解きほぐすように優しく手を広げて迎えてくれる、これからもそう云う存在との邂逅を少しでも多く体験出来ればと思いながら、暖かさの戻りつつある心地良い日差しの下をまた1人足取り軽く散策してみる。
《嬉しい解説:ガスタンク博物館/本当の名前はガスホルダー

(写真/川崎で個性を競うタンク)

(写真/高松で出会った整然と淑やかに並ぶタンク)