包み込む世界。

水蒸気越しに見えるプラント

■胸に流れる音

工業地帯を歩いていると、目に映る光景以外からも多彩な情報が様々と飛び込んでくる。
そこに立ち尽くすだけで体を震わせる気配が何層にも周囲を覆い、絶えず激しい主張と共に全身を貫いて行く。
何かが高速で回転する音、定期的に重い物が鈍く叩き付けられる音、気体が勢い良く吹き出す音、上空で炎が輝く音、次々と行き交う大型運搬車両の音…、その音色が不規則に重なって、目の前に聳える工場が力強く生きている事を主張する。
広い敷地内の何処で何が行われているのか、高いフェンスと木々に囲まれた世界の出来事は、第三者の与り知らないまま黙々と不眠不休で繰り返されていく。
剥き出しの金属に覆われた工業地帯を歩く時、それらが奏でる彩り豊かな音に包まれた空間に身を置いていると、遠く運び込まれた原料が、果てしない距離を走る周囲の配管を通って次々と流れ、やがて最後に求められる姿へと身を変え去っていくイメージが漠然と脳裏に浮かんでは消えていく。
風と共に舞い上がる数多の刺激にそんな想像を抱きながら、ゆっくりと歩を進めてみる日々。

(写真/四日市で最初に出会った風景)