《深夜の群馬探訪》/2

群馬で出会った化学プラント

■金属の輝きに魅せられて

丘一面に瞬く東邦亜鉛の安中製錬所をより魅力的な角度で眺める為に、少し離れた場所へ車を停めて、夜道に沿って白い息を棚引かせながらゆっくり歩き始めると、足を踏み出す度に体温が下がり始める事を肌で実感する。
それでも、その不思議な造形から顔を逸らさず心行くまで見詰めながら、徐々に胸に広がる不思議な気持ちと共に、人通りの少ない道を3人で静かに進む。
時々立ち止まっては言葉少なく目を凝らし、暗い斜面一帯に根を張り、愛嬌のある表情で陣取るプラントをまるで1つの生き物の様にも感じながら、自分が惹かれる工場に共通する造形や規模に就いて、気が付けば無意識に色々と思い巡らしている。
そうして、暫く幾つかの場所を移動した後は、途中から西澤さん夫妻に車で待ってもらいながら、冷気が指先に貼り付く中を、好きな角度から更に少し1人で見上げて過ごす。
深々と夜が更ける中、小川に沿う様に延びる更に人影少ない小道を、続いて今度は御二人から推薦された見知らぬ工場と出会う為に、そのまま山間へ淡々と車は入って行く。
街灯の少ないゆるやかな曲がり道を、その工場の様子を想像しながら向かっていると、暗くなった麓に突如眩い灯りに照らされた金属の塔が佇む場所に出る。
構内を小川が流れ、屹立した細いプラントが綺麗に並ぶ初対面の工場を間近に仰ぎ、改めてその日2つ目の工場観光が始まる。
結局、西澤さんと時々言葉を交しながら深夜まで続いた工場観光も、素晴らしく魅惑的な出会いによって全身満たされた充足感を残し、穏やかに終了。
そのまま西澤さん宅へと戻った後は、工場や巨大建築に惹かれる様になった切っ掛けを若い頃に影響受けた数多のSF作品に託しながら、差し向かいに朝まで続く呑みながらの語らいは楽しい侭に過ぎて行く。
翌日、太陽が午後を告げる中を高崎駅まで送っていただいた西澤さんの笑顔と共に、泊まり込み続く仕事先から抜け出した束の間の休息は一先ず終りを告げ、工場散策の余韻を乗せた列車は一路都心へと走り出した。

(写真/鈍く瞬く金属の質感に心惹かれるプラント)