永遠の先へと視線は目指す。/3

夕暮れに佇む四日市・霞コンビナート

■烟る光と影

小雨に追われる様に宿泊先を探して一泊、翌日は抱えてきた仕事を朝から進めて、昼過ぎからゆっくりと海岸へと向かう。
対岸に輝く金属の連なりを眺めながら徒歩でのんびりと歩く横を、地元の人達が自転車で、犬の散歩で、釣り竿を抱えて通り過ぎる。
工場が自然なまま脇に聳える生活を思い描きながら人々の様子を見詰めていると、目の前を揺蕩う水の如く静かに時間が流れて行く。
そうして、自分の歩調に合わせる様に少しずつ傾く陽の光に照らされて鈍く浮かぶプラントの影に目蓋を細め、この地より離れる最後に見渡すべき風景を求めて動き出す。
もはや馴染みとなりつつある辿り着いた場所で、長閑に瞬く灯火を見下ろしていると、懐かしい様子でそれに心奪われている年配の男性が話し掛けてくる。
暫く四日市の見晴らしを褒め称えながら言葉を交し、気が付けば1人となったその空間より、今回も最終列車に急かされるようにして離れる。
大型車両が行き来する夜道の脇を、また見逃してしまった多くの情景と出会う為の再訪を心へ誓いながら、徐々に速度を早めて走った。

(写真/闇に烟る四日市コンビナート)