工場を歩く、どこまでも。/2

名古屋港より眺めた新日鐵の溶鉱炉

■煙咲く幕の向うへ

四日市より少し移動して、過去に記憶が無い程に豪快な吹き上がりを見せるフレアスタックを眺めながら名古屋港周辺を散策していると、徐々に夜が明けて周囲の空気が青く清んで来る。
一晩走り続けてくれた心強い案内役も余りの冷え込みに一旦車へと戻ったので、対岸に見える新日鐵溶鉱炉が朝日に烟る様子を1人佇んで見詰め続ける。
そうして暫く過ごした後は四日市方面へと戻り、ファミリーレストランで漸く寛ぎながら朝食を採って、今回も素晴らしい時間を演出してくれた嬉しい相手と別れ、幾つかの捜し物と頼まれ物の原稿を書く為に一旦ネットカフェへと向かう。
そこで昼頃までディスプレイを前に籠もった後、再度四日市の景観から呼ばれる様に腰を上げ、今度は鉄道と徒歩での長閑なプラント探索が始まる。
事前に頼りにしていたバスが既に廃止されていたりと予定外の事態もありつつ、両足に見合ったペースで水辺のコンビナート巡りは続く。
初めて間近で目にするプラントも、半年振りに再会したプラントも等しく心から楽しみながら、最初に決めていた通り、夕方近くになって霞地区を一望出来る場所へと足を向ける。
時々流れて来る潮風に身を任せながら辿り着いた場所で、静かに高鳴る鼓動と共に暮れ行く世界を一望、漸く自分がこの聖地へと戻って来た実感を全身に感じる。
やがて穏やかに夜の帳が下りる中、小雨が降りだした闇を1人、傘も差さず最寄り駅を目指して急いだ。
【続く】

(写真/煙を吐きながら灯りが点り始める夕方近付く霞地区)