子供の頃のささやかな冒険心を。③

wami2005-05-05

■足取り軽く舞う心

気持ち良い風の吹く屋上を、鉄板に穴が空いて弱っている足場の事を忘れそうになりながら、周囲の景観を確かめる様にゆっくりと少し浮き足立ちながら歩いて回る。
初めて工場の中を俯瞰で眺められる場所に立てた喜びを噛み締めながら暫く佇んでいると、急に下から友人に声を掛けられここには自分だけじゃない事を思い出し、我に返るように急いで幾つか写真を撮り始める。
圧倒的な錆色の鉄に翻弄されるように上気したままシャッターを押し、続いて建物の中も少し散策。
そのまま撮影時間が迫ってきたので、ここで働いていた作業員の気配が色濃く残る部屋を通って外に降り、再度昼休みの終った撮影現場へと合流。
子供の頃から何度もTVで見た有名な決めシーンの撮影に立ち会えたボーナスを楽しみ、廃工場の初見学も終了。
この鉄の山もいずれ跡形無く消滅する日が来ると云う残念さを感じながら、招待してくれた脚本家氏一行と現地で別れ、そのまま友人と海岸沿いを南下し更なる新しい工場を目指した。
【④に続く】

(写真/俳優達が駆け抜けたロケ現場)