オッコーと呼ばれた壁。/②

wami2005-03-01

■海とは違う風を感じながら

川沿いへ降りて下から見上げてみると、その幾重にも積み上げたような構造から来る重厚な威圧感に少し圧倒され、流石にミニチュアっぽい印象は無くなってくる。
その後も、時間経過に伴い山間に影が差してくるまで、時々通り掛かる少人数のハイキング・グループ以外に人気のない工場脇で唯ひたすらに写真を撮りながら眺めて過ごす。
夕方前に早くも日が差し込まなくなった谷間が徐々に気温を下げる撮影途中に、思い掛けず親しい相手から電話があり他愛のない会話を取り留めもなく30分ばかり交わしてみて、当然の事ではあるんだけれど、フとこんな山中にもちゃんと電波が届く事に少し感心してみる。
名立たる聖地を前に気持ちが昂ぶったのか、いつにないペースで持って行ったメモリーを全て使い切った事が分かり、惜しむ気持ちを抑えつつ急いで支度を調え何とか《奥多摩⇒新宿》の直通便「ホリデー快速おくたま号」の最終便を捕まえて、少し慌ただしくも行きより30分短い帰路へ着く。
往路と比べ幾らか乗客の増えた列車に揺られつつ、自分がオッコーの昼間の顔しか知らない事に気付き、もう少し暖かくなったら是非夜景を撮りに再訪してみようと誓って、短くはあったが過去にない程に穏やかな工場撮影が終わりを告げる。

(写真/奥多摩工業を正面より見下ろす)