朝日に浮かぶ威容を眺め。/③

wami2004-11-07

■電話での楽しそうな声を聞いた相手に「工場に住めたら幸せになれそうだねえ…」と呆れ突っ込まれつつ

川崎でも最大規模のプラントが並ぶ事で有名な浮島町へ、小島町経由で橋を渡り初めて足を踏み入れる。
とりあえず、撮影ポイントの事前知識がないまま、激しく行き交う運搬車両と道路工事の人達だけで凛と賑わう(東京湾アクアラインへと続く)国道409号線沿いを、左右に並ぶ工場に眼を奪われながらひたすら歩く。
今この空間に仕事ではなく趣味で紛れ込んでいるのは自分だけかも知れないと云う微妙な申し訳なさと、見知らぬ巨大プラント群に囲まれた不思議な高揚感とが入り混じり、気が付くと黙々とシャッターを押し続けていた。
そして、坂口安吾が日本文化私観というエッセイの中で「工場に心惹かれるのは、美しくする為に加工した物が一切なく、必要のみに従った無駄のない独自の形で出来上がっているから(意訳)」と記していたと聞いたのを思い出し、目の前の複雑な構造物を眺めながら改めて納得する。
突き当りをそのまま横道に逸れ、少し歩いては撮影、撮影が済んだら少し歩くを繰り返すうちにその静かな道もやがて行き止まりとなり、ふと見上げれば空が白んできていた。

(④へ続く)

(写真/夜明け寸前の浮島町にて)