新しい絆。

頭上を配管が縦横に走る

■錆色の森を抜けて

■操業を停止したプラントが素早く姿を消し、廃工場が当時の状態のまま一般に公開される機会が少ないこの国とは少し事情が異なる街へ、在る日突然訪れる事に。
慌しくソウルとフランクフルトを経由して訪れたのは、フランスとの国境近いドイツのフェルクリンゲン。
長閑な街並みが広がる小さな街だが、駅を降りると直ぐ脇に巨大な黒い影が目に飛び込んで来る。

重量感漲るその建造物は、1873年に稼働を始め1986年に閉鎖された廃製鉄所で、1994年には世界遺産に登録され2000年より一般公開もされている、工場に惹かれる人間にとって素晴らしく稀有な存在。
入り口でチケットを購入し足を踏み入れると、色や造形に手を加えられる事無く剥き出しのまま保存された高炉等のプラントが、何処までも視野一杯に続いている。

広大な敷地を鬱蒼と覆う錆びた金属の塊を見上げながら歩いていると、瞬く間に時間が流れ去って行く。
時折擦れ違う、懐かしそうな顔で空間に浸る老夫婦や社会科見学に訪れた元気な子供達と共に一歩一歩視線を巡らしながら進んでいると、蘇我駅を降りて真っ直ぐに見える姿が印象的だったJFE東日本製鉄所の第5高炉の姿が不意に脳裏へと浮んで来る。
結局、高炉に寄り添う熱風炉の上にまで登る事が出来たこの場所に2日続けて通った後は、一旦観光都市ケルンに移り、廃製鉄所跡地を利用した公園ランドシャフトパークを目指す。

(写真/歩みを止めた後も続く穏やかな時間)