瞬きながら。

小川を跨いで建つ群馬の工場

■木漏れ灯の向こうに

最近、安中製錬所を訪れた後は、港に広がる大規模なコンビナートとはまた趣の違う内陸の工場を長閑に眺めて歩く。
周辺環境に対する配慮もあり、人の住む場所に比較的近い場所に建つ工場の周りにはよく高い街路樹が植えられていて、深夜にふと側を通ると、その隙間から洩れ出でる繊細な光の束につい目を奪われる。
暗い木々の合間より伝わる世界には働く人の影も殆ど見えず、その敷地に低く作業音を響かせたプラントが全身を静かに輝かせている姿だけが、何処か遠く浮世離れした感覚を伴って心の奥へと染み入ってくる。
もどかしく黒い影の隙間から流れるように垣間見えるその一瞬の様子に想像力を刺激され、映画の一場面をフラッシュバックしたかのようなその情景は、何故か懐かしい気持ちを胸の中に湧き起こさせる。
こうして、通り過ぎる工場の断片達を心で繋ぎ合わせると、今日も新しく1つの景色が深く印象に刻み込まれ、また次に待つ工場の姿をそっと夢想させる。

いつも、素晴らしい予感を掻き立てながら。

(写真/人通りの少ない道沿いに建つ、山裾の工場)