工場に行けない夜は。

シルエット工場

■愛情のカタチ

仕事で泊まり込みが続く日々は工業地帯も遠く、仕事先を早朝に抜け出そうと空を見上げると冷たい雨が降る。
そんな時は、四日市での勤務経験がある知り合いが創って送ってくれた《工業地帯》をモチーフにした曲を職場で流しながら、馴染みのプラントを想い出す。
様々な色彩の音がリズムに乗って醸し出すその情景は、穏やかに暗闇の中で佇む工場の姿を脳裏に浮かび上がらせる。
無数に瞬く灯りの中を吹き上げる蒸気が躍動感を与え、無機質な工場に不思議な生命を吹き込む。
仕事場を飾るシルエットで創られた工場のオブジェを眺めながら、作業の合間にそんな景色を観に行こうと気侭に予定をカレンダーに記してみる。
6月に閉鎖の決まった横浜プリンス、プラントに絡む不規則な螺旋階段が楽しい富士の製紙工場、水島〜岩国〜徳山〜坂出〜新居浜と続く瀬戸内工業地域、丘から眺める港に広がる室蘭のコンビナート…、まだまだ足りない。
果して何処まで希望は叶うのか、工場に惹かれる多くの人がその想いを託す作品達に囲まれながら、静かに夢想が浮かんでは消える職場での泊まり込みは続く。

(写真/何処へ繋がっているのか配管を目で追ってしまう)